自律型ドローンの低レーテンシーソリューション

Product / 04.2017


背景

人間による操作を不要とする、またはある程度不要とする自律型ドローンは、より少ない労働力を必要とすることから、人間が操縦する今日のドローンでは実用的ではない様々な困難なタスクを実行できる可能性を見せています。たとえば、行方不明となっている子供の捜索活動において、森林エリア上空に自律型の捜索・救助用ドローンの大群を飛ばすことができます。また、囚人の脱獄を防止するために、刑務所の境界線内で自律型ドローンによる継続的なパトロールを実施したり、無断侵入の試みを検知するために、原子力発電所の周辺を監視したりすることもできます。犯罪現場に配備し、周辺地域で逃亡中の容疑者の捜索と追跡を行うことも可能です。テロ攻撃の計画の疑いがある者が乗車している車両を追跡することもできます。広大なアフリカ大陸の野生生物保護区をパトロールし、密猟者から保護することにも役立てられます。これらは、潜在的な適用のわずか一部にすぎません。
 

ALX Systems は、警察権力、国境警備、反密猟活動、電力ライン監視、軍事関連などの多数の用途に使用される自律型ドローンの大手サプライヤです。同社は、自律型ドローンのプログラミングに必要な時間と専門知識を大幅に軽減した、障害物回避、ナビゲーション、および画像処理を含むコンピュータビジョン ツールボックスを提供しています。また、同社ドローンとクラウドサーバー間をセキュア接続でつなぐことによって、リアルタイムに収集されるデータクラウドで強力な処理能力を発揮することができます。さらに、ミリタリーグレードの暗号化テクノロジーによって、最高レベルのセキュリティが提供されています。ALX のドローンは、単独で、または多数のドローンで形成される群衆で機能するように設計されています。

課題

ALX は最近、公衆安全と軍事用途に合わせて設計された新型ドローンプラットフォームを発表しました。新型プラットフォームには、ほぼ瞬間的に人物や物体の動きに反応できる、前例のない機能性が採用されています。この機能は、車両の追跡などといった多数の適用分野において重要な役割を果たします。車両の進行方向が突然変化した場合、画像の取得と解析に要する遅延が原因で、ドローンが車両の進行方向の変更を検知する頃までには、ドローンは車両を超えて飛行してしまうことがあり得るためです。同様の問題は、捜索救助活動の現場でも発生しえます。ドローンは、捜索中の行方不明の子供の位置を示す画像を取得できたとしても、その画像を取得して解析した上でその位置に戻る頃には、子供が別の場所に移動してしまっているかもしれません。
ALX Systems の CEO である Geoffrey Mormal 氏は、「自律型ドローンを使ってこのようなミッションを成功に収めるには、高速画像処理機能と、カメラと CPU 間の非常に低いレーテンシーが必要となります。」と述べています。「レーテンシー」とは、カメラが取得した画像がホスト PC で処理できるようになるまでの遅延時間です。同氏は、「ALX の新型ドローンプラットフォームに必要であった低レーテンシーと高画像処理レートはデスクトップコンピュータの世界では提供されていましたが、ドローンを飛行する上で十分な小型・軽量サイズの堅牢なシステムには存在していなかったのです。」と続けています。

ソリューション

Mormal 氏は、「飛行可能なソリューションにおいて、ALX のレーテンシーと帯域幅の要件を満たす唯一のフレームグラバーは、Euresys CoaXPress ソリューションのみでした。」と述べ、Euresys の CEO である Marc Damhaut は、「軍用および公衆安全用ドローンのサイズ、重量、および振動要件を満たしながら、このレベルのパフォーマンスを達成したのは、今回が初めてです。」と話しています。新型ドローンプラットフォームに採用された Euresys ソリューションには、Euresys Coaxlink Duo PCIe/104-MIL の 2 接続高耐久性CoaXPressフレームグラバーと ADL の ADLQM87PC Intel i7 コア PC/1PCIe/104 フォームファクタ組み込みコンピュータが含まれます。Euresys フレームグラバーは、CoaXPress デジタルビデオ通信規格を使用してカメラに接続します。CoaXPress HD ビデオは圧縮されていないため、ゼロレーテンシーでの転送が可能です。フレームグラバーは、ダイレクトメモリアクセス (DMA) によって、CPU 処理を中断することなく、画像を PC のメモリに転送します。

CoaXPress カメラには高耐久性同軸ケーブルが使用されています。これらは、ツイストペアケーブルより高い周波数スペクトルに対応しているため、データの高速通信に最適なソリューションです。その一方、USB-3 は高速ビデオ通信を提供しますが、画像の取得から処理に利用できるようになるまでに数ミリ秒の可変遅延時間があります。USB-C によって画像を受信して処理されるまでには、ドローンは簡単に車両を見失ってしまうでしょう。ALX の新型ドローンプラットフォームでは、Coaxlink Duo が従来の高速カメラと 熱探知カメラに対応しています。同軸ケーブル一本を使用して最大 625 Mb/秒で画像を送信しながら、同時に制御データとトリガを送信し、最大 13W の電力をカメラに供給することができます。
フレームグラバーと CPU の双方は、96 mm X 90 mm の PC/104 フォームファクタに組み込まれています。約 15.4 mm の間隔を備えて上下に重ねられており、PCIe/104 スタッキングコネクタで接続した上で、15.4 mm のスタンドで固定強化されています。CoaxLink フレームグラバーは、MIL-STD 810 用途を含む熾烈な環境で信頼性のある、耐久性の高いコネクタを使用しています。完全な Euresys ソリューションは、MIL 規格 810G ショック・振動試験に合格済みです。
ADL の ADLQM87PC 組み込みコンピュータには、画像処理、ハイパースペクトルおよびマルチスペクトル イメージング、SWIR (短波 IR) や類似する適用分野などの高パフォーマンス計算タスクを実現するために、Intel® Core™ i7-4700EQ クアッドコアプロセッサが搭載され、HD4600 グラフィックエンジンが統合されています。また、Gb/秒 LAN ポート 2 個と USB 3.0 ポート 2 個が搭載されているため、GigE および USB 3.0 カメラ用のビジョン付加機能を追加できます。データストレージには、ADLQM87PC が SATA ポート 4 個を提供しており、内 2 個は SATA III (6 Gb/秒) であるため、CoaXPress フレーム速度に対応する 1000 Mb/秒を超える RAID 0 モードでの書き込み速度を得られます。表示出力には DVI、VGA、HDMI、および DisplayPort が含まれ、必要に応じて高解像度グラフィック出力を実現できます。

結果

Mormal 氏は、「Euresys ソリューションは、ALX Systems に、監視や追跡などの需要の高い自律型ドローン適用分野に必要な低レーテンシーと高画像処理速度能力を提供してくれます。」と述べ、次のように続けています。「ALX は、ALX のドローンハードウェアと画像処理ソフトウェア、および Euresys の画像取得と解析ソリューションの能力を実証する実演システムを構築し、自律型ドローン適用分野における前例のない機能性を実現しました。ALX はすでに、欧州国の軍事部門向けに、このプラットフォームに基づくカスタムソリューションの開発注文を受けています。」